下肢静脈瘤について④

院長の水野です。
今回は下肢静脈瘤の治療についてご説明していきます。
前々回の説明で静脈の内側についている「弁」が壊れることで、心臓まで持ち上がった血液が重力に負け、再び足の方に落ちていき足の静脈にどんどん血液が溜まってしまうのが下肢静脈瘤の原因とご説明させていただきました。
 どうすれば下肢静脈瘤の治療をできるのでしょうか?一番簡単に考えると静脈内の「弁」を治すのが一番早いように思いますが、そもそも2-3mmの静脈内にあった弁を元通りにすることは現実的ではありません。それならばどうしたらいいかというと、ダメになってしまった静脈ならなくてもいいよねと考えるわけです。この考え方は実はかなり昔からある考え方で、紀元前25年古代ローマの医学書には以下のような記載があります。「脚にできる脈瘤はむずかしくない方法で除去される。~
中略~焼灼の方法は次のとおりである。皮膚は上の方だけを切開し、血管が現れたら薄くてなまくらにしてある鉄器を熱して適度に押し付ける…」何と今から2000年以上前に現在のレーザー治療につながるような治療が行われていたことはとても興味深いことです。
 現在下肢静脈瘤の治療法としては幾つかの方法があります。
1 ストリッピング手術(図1)
 逆流防止弁がダメになり、血流が滞ってしまった静脈を、特殊なワイヤーで抜いてしまう手術です。「ストリッピング手術」は病的な静脈を取り去ってしまうので、再発する確率が低く、治療効果の高い治療法です。100年前から行われてきた治療法で、カテーテルによる血管内焼灼術が行われる前は、この手術方法が下肢静脈瘤の一般的な手術方法でした。小さな傷で手術を行っており、さほど目立ちませんが、多少傷跡は残ります。術後、アザが見られますが2~3週間ほどで消えていきます。
手術は下半身麻酔や大腿神経ブロックといった足全体の麻酔で行われることが多く、施設によっては2~3日の入院が必要となります。
2 血管内焼灼術(図2)
下肢静脈瘤治療における代表的な手術であり、伏在静脈系で施行される術式です。カテーテルを静脈の中に挿入し、内側から焼いて血管を塞ぐ手術です。再発率はストリッピング手術と同等ほどに低く、また足には小さな針孔ほどの傷しか残らないため、体への負担も軽く、美容的にも非常に優れた術式となります。低侵襲で、体への負担が少なく術後すぐに歩行可能です。血管内焼灼術にはレーザーカテーテルを使用する方法と高周波カテーテルを使用する方法がありますが、当院ではレーザー治療を行っております。
3 血管内塞栓術(図3)
血管内焼灼術に代わる次世代の治療法として2019年12月に日本でも保険治療として認められた手術で、主に伏在静脈系で施行される術式です。
カテーテルを静脈の中に挿入し、内側から接着剤を注入して血管を塞ぐ手術です。欧米諸国ではすでに広く行われている治療法で、治療成績も良好です。術後に弾性ストッキング着用の必要もなく、術後すぐに歩行可能です。

 またすぐに手術はしたくないという方や手術が適応とならない下肢静脈瘤の方には弾性ストッキングや弾性包帯を着用していただく圧迫治療が大事な治療法となります(図4)。
 当院では下肢静脈瘤の日帰り治療を行っております。
 お困りの方はぜひご相談ください。

図1 ストリッピング手術
図2 血管内焼灼術
図3 血管内塞栓術
図4 圧迫治療