大動脈瘤について①

院長の水野です。

以前の病院に勤めていたとき下肢静脈瘤とともに専門としていたのが大動脈瘤(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)になります。

今回はその大動脈瘤についてお話させていただきます。

◆大動脈とは

 国内の主要な高速道路を、もののたとえで「日本の大動脈」と表現することがあります。事故や災害で道路が遮断されると、人の流れも物流も滞り、都市の機能まひにもつながりかねません。
 このようなたとえからも、人体の大動脈がいかに大事な役割を担っているかがわかると思います。
 横隔膜より上の部分を「胸部大動脈」、横隔膜より下の部分を「腹部大動脈」といいます。


◆大動脈瘤の原因
 大動脈瘤は血管壁がもろくなり起こると考えられています
血管壁がもろくなる原因には、下記のようなものがあります。

・加齢による血管壁の変化
・喫煙、生活習慣病(特に高血圧)による動脈硬化
・血管の傷や炎症
・マルファン症候群など先天的な病気

◆大動脈瘤の分類
 大動脈瘤には①瘤の構造、②瘤の形態、③発生場所による3つの分類方法があります。
①瘤の構造による分類 
 大動脈の血管は、内膜・中膜・外膜の3層からなります。三層構造を保ったまま形成される動脈瘤を「真性大動脈瘤」、内膜、中膜、外膜が破れ、周辺組織によって形成された動脈瘤を「仮性大動脈瘤」といいます。
②瘤の形態による分類
 血管の一部が全周性に均等に拡張する動脈瘤を「紡錘状(ぼうすいじょう)大動脈瘤」、血管の一部が片方に突出する動脈瘤を「嚢状(のうじょう)大動脈瘤」といいます。嚢状のほうが、紡錘状よりも破裂しやすいです。
③発生場所による分類
 大動脈瘤ができた場所によって、「胸部大動脈瘤」(横隔膜より上)、「胸腹部大動脈瘤」(腹腔動脈、上腸間膜動脈、両側腎動脈が分岐しているあたり)、「腹部大動脈瘤」(横隔膜より下)に分類されます。胸部大動脈瘤はさらに、「上行大動脈瘤」、「弓部大動脈瘤」、「下行大動脈瘤」に分けられます。

次回は大動脈瘤の症状と検査について解説します。

なお今回の内容は名市大ブックス9いのちを守る高度専門医療~東部医療センターの挑戦の中で私が執筆した内容を簡単にしたものです。ご興味のある方はそちらもご参照ください。

図は心臓・血管病アトラス参照