大動脈瘤について②

院長の水野です。

以前の病院に勤めていたとき下肢静脈瘤とともに専門としていたのが大動脈瘤(胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)になります。

今回は2回目で大動脈瘤の症状と検査についてお話します。

大動脈瘤の症状

 大動脈瘤は、多くの場合無症状で進行します。症状がないまま突然破裂して死亡することもあり、海外では〝サイレントキラー(沈黙の暗殺者)〟と呼ばれます。大きくなった瘤に内臓や神経が圧迫されることで、次のような症状が出ることもあります。

・食道が圧迫されて、物が飲み込みにくくなる(嚥下困難)

・反回神経がまひして、声がかすれたりしわがれる(嗄声)

・気管や肺が圧迫されて、咳や血の混じった痰が出る

・おなかを触ると拍動を感じる

 大動脈解離が起こると、胸や背中に急激な痛みが生じ、解離が広がるにつれて痛みが腹部から腰に移動することもあります。大動脈瘤破裂の場合は腰痛、腹痛が、数時間から数日間にわたり持続することがあります。特に胸部大動脈で解離や破裂が起きた場合には激しい胸背部痛、腹部大動脈の場合では激しい腹痛が生じます。大量に出血すると、著明な貧血やショック状態になる危険性があり、緊急で処置が必要になります。

大動脈瘤の検査

 大動脈瘤は無症状であることが多いため、検査をしないとわかりません。大動脈の異常を早期発見、早期治療するためには、画像診断を行います。

① CT(コンピューターX線断層撮影)

 大動脈瘤の診断に必須の検査です。瘤の有無、大きさと範囲、石灰化や血栓の程度、瘤と大動脈の枝や周辺臓器との位置関係などを調べることができます。造影剤を用いると、より詳細な撮影をすることができ、後述のステントグラフトを行うときに適切なステントのサイズや長さを計測するのに有用です。

 ほかの病気やけがで撮影されたCTで、大動脈瘤が偶然発見されることもよくあります。

② 超音波(エコー)検査

 超音波検査は、痛みや苦痛がなく負担の少ない検査ですが、さまざまな部位の情報を集めることができます。体表から当てる一般的な方法と、胃カメラのように装置を飲み込んでもらって食道から当てる方法(経食道エコー)の2種類があります。  体表からのエコーは健康診断でも用いられる方法で、動脈瘤の位置や大きさ、形、大動脈解離の有無などを観察することができます。一方、経食道エコーは、手術の直前や手術中に用いられることが多い検査で、体表からは確認できない下行大動脈の状態を見るのに適しています。大動脈解離の合併症である「心タンポナーデ」(心嚢液が心臓の周りに溜まり、心臓の動きをおさえてしまう症状)や、大動脈弁の異状などを検出するのにも用いられます。

③MRI(磁気共鳴画像)

 磁場と電波を用いて、動脈瘤の位置、大きさ、形などを確認します。腎機能が悪く、造影剤の使用がためらわれるときに、造影剤を使わずに大動脈や動脈瘤内の血流を調べ、瘤内が血栓で閉塞しているか確認することができます。また、大動脈解離で大動脈の内膜に亀裂が入ると、そこに血液が流れ込んで、もともとの大動脈(真腔)とは別の血液の流れ道(偽腔)ができますが、MRIでは偽腔が血栓で閉塞しているか、それとも血流があるのか、血流があるのであれば、上から流れてきているのか、下から逆流しているのか、確認し、治療方法を検討することが可能です。

次回は大動脈瘤の治療とそのタイミングについて解説します。

なお今回の内容は名市大ブックス9いのちを守る高度専門医療~東部医療センターの挑戦の中で私が執筆した内容を簡単にしたものです。ご興味のある方はそちらもご参照ください。

CT検査
MRI検査
大動脈解離