院長の水野です。
寒くなってきて胸痛を訴えて来院される患者様が増えてきました。
今回は胸痛を起こす病気についてご説明します。
胸の痛みは胸部にある臓器が原因だけではなく、多種多様な理由で起こります。
診察する上で重要なことは、緊急性を要する疾患を、速やかに診断し対応することです。
緊急性を要する疾患には
①急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞)
②急性大動脈解離
③気胸
④急性肺塞栓症
などがあります。
①の急性冠症候群では突然の激しく締めつける様な前胸部痛を来たし、左肩~左上肢放散する痛みが特徴的です。ただし、高齢の方の場合、典型的な症状を来たさないことが多々見られます。診断には心電図異常・血液検査異常にて判断します。当院では心電図やトロポニンT検査で迅速に判断し、必要と判断すれば近隣の施設へご紹介し速やかに治療を行っていただきます。
②大動脈は内膜・中膜・外膜の3層構造です。大動脈解離はその中膜内に侵入した血液により、中膜層が内外2層に離開した状態で、本来の動脈内腔(真腔) と新たに壁内に生じた腔(解離腔;偽腔)になります。急性大動脈解離は、大動脈の破裂や臓器虚血 を高頻度に合併する予後不良な疾患です。症状としては突然の激烈な胸~背部痛を来たし、呼吸困難・ショックを伴うことが多いです。胸部レントゲンにて縦隔の拡大が見られた場合、すぐに胸部 CTを撮影し確定診断をし、速やかに外科的手術(人工血管置換術)が必要となります。当院ではCT撮影できないため疑いがあればすぐに近隣の手術が可能な病院へご紹介します。
③気胸は自然もしくは外傷後(交通事故など)で、肺が破れ、胸腔に空気が貯留した状態です。診断は胸部レントゲンで可能です。高度の肺虚脱を認め、呼吸困難を伴う胸痛が見られます。聴診にて気胸側の呼吸音が減弱しています。破れた肺より漏れた空気を緊急で外に排出するドレナージ治療が必要となるため近隣の対応が可能な病院へご紹介します。場合によっては手術が必要となることもあります。
④肺塞栓症はエコノミークラス症候群とも呼ばれ、静脈(多くは足)に形成された血栓が肺動脈に詰まることで、 突然の呼吸困難・胸痛を伴い発症します。胸部CTや動脈ガス検査で診断が確定します。当院では確定診断できないため疑いがあればすぐに近隣の対応が可能な病院へご紹介します。
この他にも緊急性を要しない胸部の痛みの病気はいくつもあります。その中でも多いのは肋間神経痛や心臓神経症が多い印象です。また胸部不快感があり、諸検査にて異常がない場合、逆流性食道炎のことが結構多くあります。
当院の検査では診断がつかない場合は近隣の施設へご紹介させていただきますのでお困りの方はご相談ください。
画像はすべてインフォームドコンセント心臓・血管病アトラスより引用しました。